モデルハウスは別荘プランということもあり、ご見学いただいた方にはとびきりの洗練された空間を体験していただけると思います。
しかし一方で、「実際に自分がここに住むイメージがわきにくい」と感じる方もいらっしゃると思います。
そこで今回は私たちがイメージする生活のシーンを切り取ってみました。
本来、この「和洋折衷の家」は大切に飾られる美術品のような家ではありません。
子供がドアに傷を付けたり、誤って床にシミを作ってしまったりしても、そこまで気にならない家だと思っています。
その理由は、使われている素材がすべて自然素材だから。
人間の感覚は不思議なもので、車やスマートフォンなどの人工物の傷はとても気になりますが、木や土や石などの自然物の傷はほとんど気になりません。
たとえばお子様のつけた傷は、経年の「劣化」ではなく「変化」として、その家の思い出の一つとして愛されていくものになるでしょう。
「和洋折衷の家」は家というものの美しさを追求し、こだわり抜いた規格住宅ですが、その美しさは決して必死に守り続けるようなものではありませんし、どこかに傷がついたからといって損なわれるような美しさでもありません。
時代とともに、人とともに、家もまたゆっくりと変わっていくものだと、私たちは考えています。
実際の生活において、最も「美しいまま」でいられないのがキッチンです。
料理をする以上、あちこちに汚れがついたり、キッチン道具があふれたりと、なかなか理想通りの風景をキープするのは難しいと思います。
「和洋折衷の家」にはセットで企画開発したオリジナル家具があり、ご希望の方にはオリジナルのシステムキッチンをご用意することが可能ですが、そのキッチンの天板はオーク材。
汚れない? 油のあとは残らない? と言うご意見もちらほら頂きますが、そういう時は「汚れないのではなく、汚れても気にならないですよ」とお答えしています。
撥水性の塗料は塗ってありますが、生きた木材にとって油は味方です。自然に染み込んだ油は木材の乾燥を防ぎ、天板を長持ちさせてくれます。
「新品の状態を必死でキープする」のではなく、建物と同様にこのキッチンもまた時の流れを染み込ませ、共に変化していくような存在なのです。
大型のキッチン用キャビネットもありますし、収納が少ないということはありませんが、多少キッチン周りがごちゃついていても不思議と「それなりに見える」という自信もあります。
それはひとえに周囲の空間、つまり窓であったり、タイルであったり、ペンキ塗りの天井であったり、そういった内装のデザインにこだわっているからこそ、どんなものがどれだけあっても空間の緊張感と美しさは損なわれることはありません。
肩肘張らない、汚れても「まあいいか」と済ませられるキッチンで、気持ち良くお料理を楽しんでいただければと思います。
モデルハウスを見学いただいた方の中には「このリビングからもう動きたくない」「帰りたくない」と仰ってくださる方も多くいらっしゃいます。
そう仰っていただけた時、私たちはいつも「同感です!」と笑顔になります。
なぜなら私たちもこのモデルハウスで打ち合わせをしたあとは、なんとなくそのままだらだらと過ごしてしまうことが多いからです。
なぜそんな風に思えるのか。
それはおそらく、人間の深層心理の部分でいろんな要素が作用しているのだろうと思うのです。
私たちはその一つ一つを具体的に認識し、研究したわけではありません。
私たちがやったことは、1000年以上の歴史ある日本の建築を今の時代に甦らせただけです。
光と影。目線の位置。窓の大きさと高さ。通り抜ける視線。縁側という余白。オリジナルソファの革の手触りや、自然素材の匂いや、照明の暗さ、そんなものが合わさって「落ち着く」という感覚を生み出しているのです。
そしてそれは日本人が見出した美であり、気の遠くなるほど長い歳月をかけて完成させた、住宅の理想のバランスなのです。
そしてそのバランスの中に暮らすと、一つ気付くことがあります。
それは、リビングはそんなに広くなくていいのだということです。
わずか八畳、縁側を入れても十畳のモデルハウスのリビングですが、その「八畳」の空間をご自身がどう感じるか、ぜひ一度モデルハウスで体験してみてください。
まるで洋館のようなダイニングで、朝食のひとときを。
大きな上げ下げ窓から射し込む連続したハイサイドライトが、普通の日本の家には生まれない雰囲気を演出します。
和洋折衷の「洋」を担うこの部屋では座る高さが最も高くなり、テーブルと椅子は一般的なものとなります。
洗い物で水が跳ねたり、食べ物を落として汚してしまったりすることも多いダイニングキッチン。そのため床は塗装していますが、自然塗料なので赤ちゃんが舐めてしまっても大丈夫です。
これは二人暮らしの雰囲気ですが、ダイニングは広めに取っているので四人、五人と増えても問題ありません。
自然光の中で、ゆったりと食事をお楽しみいただけます。
ところで、「和洋折衷の家」にはこのダイニングキッチンが無いプランもあります。
それは敷地面積の限られている二階建てプラン。
じゃあどこで食事をとるのかというと、和室で、ちゃぶ台でご飯を食べる形です。
実際にやってみると分かりますが、ちゃぶ台でご飯を食べると、テーブルで食べるよりも一回りリラックスして食事をとれることが多いのです。
特に小さなお子様のいらっしゃるご家庭では、隣でくっついて一緒にご飯を食べることも、膝の上に乗せて食べることもできますし、食べ終わったらごろんと寝転がることもできます。
ダイニングを削り、和室に兼用させることで、建築コストを抑えられることはもちろん、家がコンパクトに、しかし空間としては広々と使うことができます。
これこそ日本人が生み出した、用途が決まっていない、何でも使える「和室」というものの魅力なのです。
もちろん、ダイニングのある平屋プランでも、たまに気分転換で和室で食べることも可能です。
「ご飯を食べる部屋が複数ある」「それを時間や季節によって選ぶことができる」という点だけでも、非常にぜいたくなことではないでしょうか。
和室は本当に何にでも使える万能空間です。
冒頭の写真では子供たちの勉強部屋になり、先ほどはダイニングとしての役割を書きましたが、ご覧のように、布団を敷けば寝室に早変わり。
実際、別荘使いを想定しているモデルハウスのプランは寝室は無く、このように押し入れから布団を出してきて和室に寝るというスタイルを想定しています。
先ほど出てきたちゃぶ台の良いところは、簡単に片付けることができるという点です。私たちがご用意するオリジナルのちゃぶ台も脚を折りたたんで転がして移動させることが可能。
あとは障子を閉め切るだけで、そこはもう旅館のような雰囲気です。
特にお子様のいらっしゃるご家庭では、どんな寝相でも大丈夫。赤ちゃんの転落防止の柵もいりません。このようにみんなで遊びながら、お話をしながら、並んで眠ることができます。
洋風の暮らしは「ダイニングにはダイニングテーブルとチェア」「寝室には大きなダブルベッド」という感じで、大型の家具によって部屋の用途が一つしか選べません。
しかし日本人は「和室」と「ちゃぶ台」と「布団」を発明しました。
何にでも使える、い草の良い匂いに包まれる手触りの優しいこの畳空間が、現代の住宅から失われてしまうことは本当にもったいないことです。
私たちは「美」という観点からも「実用」という観点からも、この和室という空間を大切に据えています。
そしてそれだけではなく、ヨーロッパの住宅の美しさを持つダイニングキッチン、そしてその文化を採り入れ、日本風にアレンジした「和洋折衷」のリビング、その三つを一つの住宅に無理なく収めること。それが「和洋折衷の家」の目指したコンセプトでした。
規格住宅として生まれた「和洋折衷の家」ですが、多少のアレンジは可能です。
ぜひ一度モデルハウスにお越しになり、この唯一無二の空気感を味わいながら、ご自身の豊かな生活を想像してみてください。